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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

読書録:図解 中世の生活

 ドラクエデモンズソウルなどのゲームでもおなじみ、西洋中世の世界観や日常生活がよくわかる図解本である。

図解 中世の生活 (F-Files No.054)

図解 中世の生活 (F-Files No.054)

 医術、衛生、刑罰、衣食住、水車小屋、居酒屋、人狼、娼婦、乞食、娯楽、風呂屋等々、のちに18世紀の啓蒙主義時代になって次々に整理整頓されていく中世特有のものの考え方やくらしは非常に興味深い。

 民族大移動や外敵侵略が落ち着いた11世紀から13世紀にかけて、西欧社会は比較的安定していた。農業技術の革新、商業ルネサンス、都市の発展などもみられ、いわゆる現代に通ずるヨーロッパ社会の風景が確立していった時期ともいえる。
 ヨーロッパの原風景は中世にあり。

読書録:超約 ヨーロッパの歴史

 原題は ”The Shortest History of Europe” である。タイトルの「超約」という造語が誤解を招きそうではあるが、中身はまさに王道中の王道であり、あえて私的に訳すとするなら『ヨーロッパのあらまし ハースト教授の西洋史講座』などはいかがだろうか。

超約 ヨーロッパの歴史

超約 ヨーロッパの歴史

 古代ギリシャから第2次世界大戦まで西洋史を極めてコンパクトに、かつ深みと笑いをもって叙述するその語り口には驚嘆しきり。オーストラリアのラ・トローブ大学にながらく勤務していた著者の授業がいかにエキサイティングなものであったかは容易に見当がつくというものである。
 本文中の写真や図版、解説用の図式は、単に理解を助けるというだけでなく、知的にも面白いものが多数用意されている。それだけではない。ハースト教授の語りは絵画や彫刻、果ては代数や幾何学天文学にまで及ぶ。「こんな歴史の授業を受けたかった!」と思わせるには十分すぎるほどの中身の濃さ。
 
 センター世界史は9割が当たり前だったという人にも、世界史資料集を眺めているのが好きだったという人にも、そして世界史を学びなおしたいという人にも打ってつけの1冊、王道にして明瞭簡潔かつ知的好奇心をくすぐる良書の登場である。

追想:中欧を旅して(後半)

 望外の長期休暇で前年に引き続き再び欧州へ。前回ほどカルチャーショックはなく、落ち着いて快適に過ごせた。また今回は各種支払時に極力クレジットカードを使用せず、町の人と可能な限り会話するよう努めた。

【2019】ニュルンベルク、ローテンブルク、ライプツィヒドレスデン、ナウムブルク、ミュンヘン

 一日で一都市という都市周遊の旅だったので各都市を箇条書きで。

1.ニュルンベルク
・中央駅のファサードが大変立派
・駅付近と駅ビル内に多数の警察官(土日だったから?)
・駅の入口で不良っぽい子たちがみなタバコ(とレッドブル
・夕食のカレーのライスがインディカ米(人生初)で非常に美味しかった
・安心と信頼のバーガーキング

2.ローテンブルク
・中世都市の面影を色濃く残す町
・市庁舎からの展望はまさに「ドラクエの町」そのもの
・聖ヤコプ教会や中世犯罪博物館は見どころ満点
・町をぐるりと囲む城壁からの眺めもなかなかのもの
・ソーセージとビールが旨い

3.ライプツィヒ
中央駅の広さは圧巻(阪急梅田と阪神梅田と南海難波のコンコースすべてを並べてもまだ有り余るホームの数)
メンデルスゾーンハウスの指揮者体験コンテンツは、ウィーンの音楽館よりも高性能
トーマス教会でのコンサートは格別(オルガンコンサートと合唱コンサート)
・トーマスショップではバッハ関連グッズを大人買い
・ラーメン屋や寿司天ぷら屋など日本食レストランが流行っているのか、複数見かけた
・野菜ラーメンを食べてみたが、それなりの味(コンソメスープに小麦粉感少な目のストレート麺といった感じ)
・留学するならライプツィヒ!と思えるくらい素敵な町
・安心と信頼のマクドナルド
・優しく親切な人が多かった

4.ドレスデン
・教会群やゼンパーオーパー等、名所だらけ
エルベ川クルーズは時間的に行けず
・ピザとビールが旨い

5.ナウムブルク
ライプツィヒから鈍行各駅停車で1時間ほど
大聖堂世界遺産
ヴェンツェル教会のオルガンコンサートは超満員
ヒルデブラント・オルガン*1の音色には打ち震えた(今回の旅の目的はこれだった)
・何代も続く老舗ベーカリーのサンドイッチが美味
・ちょうど祝日(メーデー)とあって町はお祭り真っ最中(広場ではイベントと植木市、少し外れの広場ではフリマ)
路面電車の車掌のおじちゃんが「今日は祝日ダイヤだから気をつけるんだよ、本数が少ないからね、帰れなくならないようにね(大意)」とビラを渡しながら懇切丁寧に説明してくれるも、無慈悲なネイティブスピード・ドイツ語(最初から最後まで「一言も」聞きとれなかった)
・町で会う人みな優しく親切だった
・駅のコンビニのマンガコーナーに売っていたドラゴンボール(ドイツ語)

6.ミュンヘン
・文房具屋には、日本では見たことないような製品がたくさん(文房具好きにはたまらない)
BMW博物館には往年の名車が多数(一方で展示スペースのかなりの部分を要して「地球環境への配慮」を猛烈アピール)
・ピザとスパゲティとビールが旨い

7.番外編
・どの町も広場や駅には必ずといっていいほど本屋があった(町から本屋が消えつつある日本とは対照的だった)
・現地のサンドイッチはどこで食べても美味しい
ルフトハンザのグランドスタッフさんみんなスーパー美男美女

28 地球の歩き方 aruco ドイツ 2018~2019 (地球の歩き方aruco)

28 地球の歩き方 aruco ドイツ 2018~2019 (地球の歩き方aruco)

*1:リード系パイプがこれほどまでにオーボエファゴットであったか、フルート系パイプがこれほどまでにフルートであったかと驚嘆。音色の瑞々しさにこころ震えた。バッハのオルガンコラールには静かに涙した。

これだけで十分!ドイツ語圏の旅の知識まとめ(言語、マナー、交通機関等)

 ウィーンやザルツブルク、ケルン、ミュンヘンなど、ドイツ語圏には魅力的な都市がたくさんある。長期休暇で行ってみたいけど、添乗員付ツアーだと何十万円もするし、かといって個人だと言葉が不安... 以下、そんな不安を即解消。

【基本情報】
 ほとんどの情報は『地球の歩き方シリーズ』に書いてある。よく使う単語やフレーズも載っている。
(以下、主に『地球の歩き方 ドイツ 2018-2019』に書いてあったこと以外を実体験を踏まえて紹介。)

【言語】
 観光本に真っ先に出てくるような大都市であれば、英語は全く問題なく通じる。看板の表記もドイツ語と英語で併記されていることが多い。また、地方都市であっても、いわゆる観光スポットは英語が通じる。(スタッフがはじめから英語で話しかけてくることも多い。ごくまれに日本語ぺらぺらのスタッフがいて驚かされる。)
 一方、各駅停車しか止まらないような中小都市やバスでしか行けないような田舎町では、基本的にはドイツ語しか通じない。とはいえ、実際に使う単語フレーズはわずか10個だけ。
 
1. こんにちは  グーテン・ターク
2. これ     ダス
3. ~をください ~ ビッテ
4. 1つ(2つ) アイン マル(ツヴァイ マル)
5. ここで    ヒーア
6. はい いいえ ヤー ナイン
7. すみません  エント・シュルディ グンク(スタッフを呼ぶとき)
8. お会計お願いします  ツァーレン・ビッテ
9. ありがとう(ありがとうございます)  ダンケ(ダンケ・シェーン)
10.  さようなら  アウフ・ヴィーダー ゼーエン
(※ゼーエンの部分をショーンと言っている現地人も。)

 これだけ覚えればもう十分すぎるくらい。

売店やスーパー】
 駅ビルの売店やパン屋、スーパーなど、電子式の大きなレジがあるところでは多少大きい金額の紙幣を出しても問題ないので、こういったところでお金をくずして、小銭を常に財布に入れておくべき。(トイレやチップのため。)

※高額紙幣については万が一のために100ユーロが一枚もあれば十分。使い勝手が良かったのは10ユーロと20ユーロ、これらはあらかじめ日本で多めに両替しておきたかった。50ユーロは現地でくずすのに難儀した。

【レストラン】
(1)注文
 入ってすぐのところで受付け、基本的には席まで案内してくれたスタッフもしくはメニューを持ってきてくれたスタッフが会計まで専属担当なので、顔を(ガン見して)覚える。(そのスタッフさん以外を呼んでも基本的には来てくれないので。しかし、店の状況によっては料理を持ってくるのは別スタッフということも。それでも、料理がすべてそろったら専属担当が戻ってきて「ご注文の品はお揃いですか?」的なことを確認しにくることが多い。)
 料理は、出てくる量がとてつもなく多いため、よほどの空腹でもない限り、2人なら1人がサラダ、もう1人がソーセージといった感じで十分。サラダにもチキンやポテトが乗ってくるし、ソーセージにも必ず「何か」が添えられている。店によっては頼んでもいないのにポテトや素マカロニが出てきたりする。これにビール(基本単位は500ml)をあわせればたいてい満腹のはず。
(2)会計 
 支払いは席で行うのでスタッフを呼ぶ。いわゆる観光客向けの店だとここで「キャッシュ・オンリー」と言い放たれることが多いはず。要するに「チップ」を要求されているので、1割程度を上乗せして支払う。23.60ユーロであれば25ユーロ、32.90ユーロであれば35ユーロといったところか。
 クレジットカードでの支払いがOKのところはこのあたり気楽で、出された端末に自分でカードを挿入し、スタッフが「ピンコード」と言ったら暗証番号4桁を入力、以上。(とはいえクレカ払いでも、チップ相当分の「サービス料」が上乗せされたものが請求金額となっていることはままある。そのあたり丁寧なスタッフはそのことも説明してくれる。)
 場合によっては、現金でチップ分を含めて支払って、お釣りがそっくりそのまま返されることがあるが、これはそのお釣りから再びチップ分を支払うべきなのだろう。

【鉄道】
 ドイツ国内の移動はドイツ鉄道(DB)が基本で、スマホアプリ(DB Navigator)で乗換案内や遅延情報は正確迅速に入手できる。
 駅では入口の電子表示板はもちろんのこと、それぞれのホームごとにも電子表示板がある。ホーム自体がA~F等アルファベットで待機エリアが区分されており、○番線のA~Bエリアには1等車が停車、C~Eエリアには2等車が停車する等の情報はそのホームの電子表示板に示されている。
 いわゆる特急車両(ICEやIC)は全席指定席だが、予約が入っていなければ自由席、見分けるにはそれぞれの座席の荷物棚(もしくは座席の通路寄り部分)の電子表示板を確認する。発着駅(Frankfurt Hbh~Berlin Hbh等)が表示されていれば「指定席」、表示されていなければ「自由席」。現地が長期休暇シーズン等でなければ自由席で全く問題ない。特急車両以外はいわゆる普通の電車なので全席自由。(ちなみにトイレWCはどんな車両にもあるので安心。)

【ホテル】
 チェックイン時に記入する内容は結局、世界中どこでも一緒なので、書くべき情報を書ききってしまえば特に問題なし。
 その後、10~15ユーロ程度をクレジットカードで支払いをするように言われることがある。(宿泊料の事前支払の有無に関わらず。)
 いわゆるデポジットで、部屋のミニバーを利用しなければチェックアウト時にその金額は全額キャンセルしてもらえる。そのことを「ギャランティ」と言ったり「チャージ」と言ったり、あるいははっきり「デポジット」と言ってくれたりと、表現はホテルによりけりなのだが、とにかく一時的に前金を払わなければならないことがわりとある。標準的なクラスのホテルであれば基本的にはこのデポジット制が導入されているとみていいだろう。
 
※チェーンだと「Intercity Hotel」がコスパ良し。いわゆるビジホ相当で中央駅から徒歩すぐに立地していることがほとんど。トイレシャワーはしっかりしてるし、部屋中コンセントだらけ。部屋に置いてある500mlの水も無料。

【おまけ:入国審査】
 個人旅行であれば、入国審査のときに滞在目的と滞在期間、滞在先を自分で言わなければならない(もちろん英語でOK)が、ついでに予約済ホテルのバウチャーの提示を求められることがある。(かばんの奥にしまいこんでいると出すのに慌てる。)


A14 地球の歩き方 ドイツ 2019~2020

A14 地球の歩き方 ドイツ 2019~2020

追想:中欧を旅して(前半)

 去年はプラハやウィーンへ、今年はライプツィヒドレスデンミュンヘン等のドイツ諸都市へ行くことができた。

【2018】プラハ&ウィーン

1.スキポール空港とタバコ

 プラハへの乗り継ぎでアムステルダムスキポール空港に降り立ったのが初海外となった。
 空港施設の余りの広さに圧倒されたことは言うまでもない。乗継便までに相当の時間があったから少しだけ屋外に出たが、世界的な禁煙の潮流などなんのその、玄関前広場で堂々とタバコをふかしている人々には驚かされた。ヨーロッパでは禁煙や分煙が相当進んでいるイメージを抱いていたが、実際にはそうでもなく、むしろ屋外喫煙についてはかなり寛容なようだった。
 彼らのタバコの匂いは、まさにヨーロッパのそれだった。いわゆる洋モクの香りだった。ここはオランダ、アムステルダム。海外に来ていることを実感した瞬間だった。

2.プラハ到着

 プラハに到着したのは23時前だった。送迎タクシーに乗って市街地へ向かう車窓から見える風景すべてが異国を感じさせた。右側通行するクルマと路面電車、街灯に染まる建物、ライトアップされたプラハ城。まるで映画でも見ているかのようだった。
 今から思えばプラハのホテルが一番良かったかもしれない。大通りから少しだけ路地を入ったところにあって、とても静かで居心地のよいホテルだった。どうやらもともとはアパートメントだったようで、過ごしやすさもうなずける。朝食で食べたチーズの美味しさも忘れられない。乳が、牛が違う。草が、水が、気候が違う。そんなことを痛烈に感じたものだった。

3.プラハの街で

 観光都市とあって街は観光客だらけだった。スタバやマクドH&Mは日本同様、大賑わい。日本ではもう見かけなくなったタバコ屋は街の至るところで見かけた。
 見どころはやはり旧市街ユダヤ人地区、モルダウ川、そしてプラハ城。お城の聖ヴィート大聖堂には、心底圧倒された。
 移動にはメトロが便利だったが、これが実に印象的で、施設外観やエスカレーター、券売機等のつくりがいわゆる「旧国鉄」感にあふれていたのだ。また、プラハでは、道端へのゴミのポイ捨てが日本では考えられないほど多く見られて面白かった。ここはプラハ、旧社会主義圏ということをうっすら感じたのだった。
 ちなみにアクティビティとしてはモルダウ川クルーズがおすすめ。所要時間は小一時間ほどで、足を休めて涼みながら旧市街の景色や軽食も楽しめる。

4.鉄道の旅

 プラハからウィーンへは電車での移動だったが、車窓から見える景色はまさにヨーロッパのそれだった。
 高い山はほとんどなく、延々と広がる平野と丘陵地帯。その田園風景のさなかに、現れては通り過ぎていく茶色の屋根の田舎町。そして唯一、空に高く伸びる教会の塔。これもまた映画で見た景色そのものだった。

5.近代都市ウィーン

 直前のプラハと比べて、ウィーンはあまりにも整然としていて小綺麗で、まさに近代都市の典型だった。ゴミのポイ捨てはほぼ見かけなかった。
 一方の雰囲気はというと、まさに京都。住むところではなさそうだったし、また田舎者には特に厳しい街だった。それでも、楽友協会の見学ツアーは音楽愛好家なら見逃せない。
 ホテルはたまたまコンツェルトハウスの近くで、ついでにコンツェルトハウスでの演奏会にも行くことができた。1900年代初頭のホールはまさにその時代を感じさせるつくりで、ここで聞いたマーラーの第3交響曲(これもまさに同時代)は忘れられない。

6.巡礼の旅

 旅のクライマックスは、聖フローリアン修道院教会ブルックナーファンの聖地であるが、これについてはまた別の機会にしたいと思う。

15 地球の歩き方 aruco チェコ 2019~2020 (地球の歩き方aruco)

15 地球の歩き方 aruco チェコ 2019~2020 (地球の歩き方aruco)