どういう言語体系なのかずっと興味があった。
- 作者: 小林標
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/02
- メディア: 新書
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格変化、語尾変化、名詞の性、時制、接続法、そのいずれにおいても多くの規則が存在する。変化のパターンが非常に多い。しかし一方でいわゆる前置詞や助詞といったものに頼らずに、文の意味を極めて精密に確定することができる。また不規則変化というものも数が少ない。
ラテン語の文法規則は網羅的であり大変にシステマティックであり、もちろん暗記量はとてつもなく多いが、そのぶんたいへん秩序だっている。ドイツ語だってかなり整然としているが、その比ではない。圧倒的な秩序体系、論理一貫性、意味の明晰さを誇る言語、それがラテン語である。
教会を中心に汎ヨーロッパ的に用いられたのもうなずける。誤解の余地の極めて少ない言語体系をしているからである。意味のズレを許さない各種の変化規則が張り巡らされているのである。
しかしこうしたことは他方で、ほんとうにごく少数の専門家にだけ許された特権的な言語であるということも実感させる。ラテン語を使いこなせる者、それは高度の技術を身につけた知的エリートにほかならなかった。