趣味愉楽 詩酒音楽

人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

ハルモニアの高みから

 休みの日の朝、今日はどんなふうに過ごそうかと考えながら、まずは音楽を聞こうとおもって、やっぱりこれだと。

Palestrina Vol. 3

Palestrina Vol. 3

 ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ*1が生きた1500年代イタリアといえばもちろんルネサンスの時代であり、絵画や音楽が咲き誇った時代である。
 彼の残した数多くの宗教的合唱曲を毎日1作品ずつ聞いていったとしても数年かかるだろう。まだ近代的に把握されうる≪芸術≫というものはなかった時代である。ありえたのは≪捧げもの≫としての技術の体系であった。*2彼は対位法の技術をその極限の高みにまでもたらした、イタリア・ルネサンス音楽最大の技術者である。
 ゆるやかに流れるメロディーたちがハーモニーの非調和と調和の綾を織りなす。2度の音程のぶつかりとその解決がこれ以上ありえないほどに純化されて立ちあらわれる。5度の音程が永遠のときの流れを響かせる。3度の音程によってもたらされたのは私たちのための平安であった。

*1:パレストリーナというのは地名である。

*2:もちろん彼は世俗音楽も書いた。