フリードリヒ・ヘルダーリン(1770~1843)は『パンと酒』第7節でこう述べる。
惨めな時代になんのための詩人か 私は知らない。
しかし、詩人は呼びかけに応え、証しする。
詩人の魂は長らく 限りない存在に
なじんでいたが 突然の衝撃に襲われて 記憶に
ゆり動かされ 神聖な光芒に点火され やがて魂から
愛の結実が 神と人との作り成した歌がめでたく誕生し 神人双方を証しする。
(『祭の日の…』より)
しかし、近しさこそが困難である。
近くにあって
たしかめるよすがもないのは 神。
(『パトモス』より)
不在を告げ知らせるのもまた詩人である。
しかし、詩人はこうも述べる。
心ははずむ しかし言葉はついて行かない。
だが 絃楽はすべての時に音を恵み
近づく天上の者に 喜びを与えもしよう。
(『帰郷』より)
- 作者: ヘルダーリン,川村二郎
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