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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

タリス・スコラーズのパレストリーナ

 16世紀イタリアを代表する作曲家パレストリーナのミサ曲集。

Tallis Scholars Sing Palestrina

Tallis Scholars Sing Palestrina

 対位法的な声楽作品といえばアルプス以北の作曲家*1によるものがほとんどだった当時、カトリックの中枢ローマで活躍したパレストリーナは稀有な存在だったそうな。タリス・スコラーズの歌声によって対抗宗教改革時代のミサ曲が現代に再びよみがえる。
 ドイツ・プロテスタントルター派*2が会衆のための「コラール*3というジャンルを創出する一方で、パレストリーナのミサ曲は対位法芸術の極致を示している。
 ベースラインの上に次々に積み重ねられていく複数のメロディが、まったくの破綻も来すことなくむしろ無限の広がりをもって、三和音の絶対的な調和のもとに1つとなる。そのサウンドはまさに音響の建築。音世界の理想的な秩序はパレストリーナとともにある。

*1:たとえばギヨーム・デュファイやジョスカン・デ・プレなど

*2:2017年はいわゆるルター『論題』の発表からちょうど500年のメモリアルイヤーである。

*3:会衆が歌いやすいように作られた平易な典礼合唱曲