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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

宇宙(根源的秩序)の鳴り響きとしての交響曲

 第3番だけは通して聞いたことがなかった。

マーラー:交響曲第3番

マーラー:交響曲第3番

 
 ハイティンクベルリンフィルによる佳作である。とりわけ両端の楽章の魅力に一聴でとりつかれる。
 実は金曜日に大阪フィルの定期公演で聴くのでとても楽しみである。特に最終楽章はライブで聴くに限る。第9番*1アダージョに通じるような、深い深いうねりにすべてをゆだねる体験は録音では限界がある。
 

 交響曲ジャンルにおいて、たとえばマーラーなら第9番、チャイコフスキーなら第6番が、私的ナンバーワンである。
 これらの交響曲は最終楽章において人間存在の根源的な狂気に触れている。通常では見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる、そのような世界の深淵を垣間見る瞬間は、狂気すれすれの状態である。
 オーケストラの巨大なサウンドの光が照らしだす根源の闇は魅了してやまない。

*1:京都大学交響楽団の第190会定期演奏会(2012年1月)を忘れることはできない。