趣味愉楽 詩酒音楽

人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

20世紀前半のダブルB

 バルトークとベルクの作品にはとても惹かれる。
 理知的なものと情感とのバランスに非常に親しみを感ずる。
 作曲のレパートリーをみるかぎりでは、バルトークのほうがいくぶん器用なタイプだったのかもしれない。しかし一方で世紀転換期の、伝統と前衛が入り混じるあのウィーンの街で生まれ育ったベルクの音楽には、ある種の異様な魅力がつきまとう。
 

Berg, Webern & Schönberg: Chamber Music

Berg, Webern & Schönberg: Chamber Music


 たとえその大部分で前衛的な手法が用いられていたとしても、ベルクの音楽には必ず悪魔的・魅惑的な歌が散りばめられている。『ヴォツェック』や『ルル』といったオペラ作品をみるまでもなく、この『抒情組曲』と名づけられた弦楽四重奏曲には妖艶にきらめく歌の翳りがある。