リルケの『ドゥイノの悲歌』の「第9悲歌」はこの詩作全体の頂点を成す。
【第1連から】
つかのまのこの存在をおくるには
(・・・)なぜに
人間の生を負いつづけねばならぬのか
【第2連から】
あらゆる存在は一度だけだ、ただ一度だけ。一度、それきり。そしてわれわれもまた一度だけだ。くりかえすことはできない。しかし、
たとい一度だけでも、このように一度存在したということ、
地上の存在であったということ、これは破棄しようのないことであるらしい。
【第3連から】
ああ、しかし地上の存在の後に来るあの別の連関へは
何をわれわれはたずさえて行けよう?
(・・・)
たから、たぶんわれわれが地上に存在するのは、言うためなのだ。家、
橋、泉、門、壺、果樹、窓――と、
もしくはせいぜい円柱、塔と……。しかし理解せよ、そう言うのは、
物たち自身もけっして自分たちがそうであるとは
つきつめて思っていなかったそのように言うためなのだ。
【第4連から】
この地上こそ、言葉でいいうるものの季節、その故郷だ。
されば語れ、告げよ。
リルケの詩作(思索)は20世紀の現代思想を先取りしているようにも見える。
- 作者: リルケ,手塚富雄
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