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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻(曽根麻矢子)

 使用楽器:ヨハン・ハインリヒ・グレーブナー(ドレスデン)が1739年に製作した楽器(ピルニッツ城所蔵)をモデルにデイヴィット・レイが2005年に製作したジャーマン・タイプ・チェンバロ
 調律法:マルプルグ調律法*1を基本に独自アレンジを加え、マルプルグ調律法が合わないと感じられた曲についてはヴァロッティ調律法をアレンジしたもの
(使用楽器と調律法について、ブックレットの解説より抜粋)

バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻

バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻

 端正優美な語り口、揺るがぬ構成とテンポ感、そして隅々まで行きとどいたフレージングでもって各調を歩むその音楽は、実にいきいきとして雄弁である。そして、透明感あふれる楽器の音色は、奏者独自の調律法によっていっそう魅力的に響く。

 

*1:マルプルグ調律法について、筆者はこのCDを通じて初めて知ったのだが、聞いてみたところ、ミーントーン寄りの響きが印象的である。導音を低めにし、第3音の純正度を高めた調律法であろうか。フリードリヒ・ヴィルヘルム・マルプルグ(1719-1795)が考案した調律法と思われる。(この調律法についての日本語の解説は、おそらく存在しないようにも思われる。)