チェコ東部、モラヴィア地方の作曲家ヤナーチェクが唯一完成させたヴァイオリン・ソナタ。
弦楽四重奏曲や合唱曲(グラゴル・ミサ等)でもそうだが、ヤナーチェクにおいては、民族音楽の要素と西欧クラシック音楽の要素が見事にブレンドされており、聞きやすく、それでいて西欧旧来型の音楽に決して迎合しない、独自のスタイルが確立されている。
もちろん、バルトークやコダーイ、シマノフスキやエネスコなど、東欧世界の作曲家は他にも数多くいるが、圧倒的な音楽の楽しさのうちに、民族音楽の語法と西欧クラシック音楽の語法を渾然一体に融合して発展的に呈示してみせるヤナーチェクの魅力は、実に尽きせぬものがある。