日本人のこころのふるさとは、何だろうか。
それは私が思うには、映画『男はつらいよ』であり、あるいは、じっとり雨降る、夏の宵、水田にこだまする蛙声。
著者は、日本文化の根底にあるものとして次の五つを挙げている。
一、東海道、とりわけ富士山
二、桜
三、中国文化
四、正月
五、海
確かになるほどと思える。
それに対置されるドイツ文化は次のとおり。
文学作品とりわけ詩を取り上げながらドイツの原風景を巡る本書には、他にも「メランコリー」という心性や、「長くて厳しい冬、モミの樹」といった自然環境的なキーワードも登場する。
ステレオタイプ的なものが倦厭される昨今、そうは言ってもおおむねそのような傾向性のうちに理解が深まるということもあるわけだから、話半分ながらも伝統的な文化論の枠組みを知っておくに越したことはない。