趣味愉楽 詩酒音楽

人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

ブルックナー:ピアノ作品集

 ブルックナーのピアノピース(と第7交響曲アダージョの独奏ピアノVer.)がおさめられている。

ブルックナー・ピアノ独奏曲全集

ブルックナー・ピアノ独奏曲全集

 《Erinnerung 思い出》などにおいては大胆な和声法が聞けるが、その他はおおむね当世風のピアノ小品が並ぶ。
 後世、何者かによって二手ピアノ用に編曲されたとおぼしき第7交響曲アダージョは、独奏ピアノにおいても実に雄弁である。
 マニア向けとはいえ、ピアノで聞くブルックナーはもっと知られてもいい。
 

バッハ:無伴奏チェロ組曲

 古い録音だがまったく色あせない。

バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)

バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)

 チェンバロ・オルガンにレオンハルトがいれば、チェロにはビルスマがいる。
 古楽演奏の黎明期においてすでに堂々たる構え。音楽は無理なく自然に、悠々と流れる。

モーツァルトのピアノ・トリオ集

 モーツァルトのピアノ・トリオのほとんどはウィーン時代に書かれた。

Mozart: Piano Trios [SACD]

Mozart: Piano Trios [SACD]

 これらピアノ・トリオ作品は、いずれも作曲者独特の底知れぬ暗さや絶望的なまでの畏怖の念などとは無縁であり、明朗清澄な歌がゆったりとして実に健康的である。それはただただ無邪気な愉悦の時である。

シベリウスのヴァイオリン小品集

 協奏曲にとどまらない、シベリウスのヴァイオリン作品の魅力を存分に伝える好演。

Sibelius: Humoresques / Serenades pour violon et orchestre

Sibelius: Humoresques / Serenades pour violon et orchestre

 自然体でいながら飽かず、何度でも聞きたくなるシベリウスの音楽を象徴する良盤。

近年のペルトの合唱作品

 タイトルの《アダムの哀歌》のほか、《サルヴェ・レジーナ》や《エストニアン・ララバイ》など、合唱と弦楽オーケストラによる、アルヴォ=ペルトの近年の作品の数々。

Adam's Lament

Adam's Lament

 弦楽の響きの上に、緊張感と崇高をたたえた合唱がうちすえられる。随所にあらわれるユダヤ旋法はなおいっそう永遠の響きを予感させる。
 アルヴォ=ペルトの描く音楽は現代人に1つの神話的世界を垣間見させる。この地上の私たちと超越的な存在との関係性の神秘を突きつけるように思えてならない。