70歳を超えたレオンハルト、晩年の境地。
17世紀以降の鍵盤音楽に多大なる影響を与えたフレスコバルディとルイ=クープランの傑作集である。
なかでもクープランのニ長調組曲は、レオンハルト独自の調律も相まって、このうえなく響き、余韻する。
いわゆるバッハ以前の音楽が広く演奏されるようになった昨今でも、1700年よりも古い時代の音楽が音楽史的ないしある種の博物学的な興味関心以外で聞かれることは、そう多くはない。
レオンハルトの音楽は、されど、決してそのような類のものではない。
17世紀の音楽がいかに雄弁で、ファンタジーに満ちあふれ、想像力を刺激するか。
ブルボン王朝と三十年戦争と魔女と科学の時代に、音楽は、ひょっとすると現代よりもはるかに魅惑の存在であったのだ。