趣味愉楽 詩酒音楽

人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

2023-01-01から1年間の記事一覧

ルイ=クープラン:組曲ニ長調

70歳を超えたレオンハルト、晩年の境地。Frescobaldi & CouperinAlpha ClassicsAmazon 17世紀以降の鍵盤音楽に多大なる影響を与えたフレスコバルディとルイ=クープランの傑作集である。 なかでもクープランのニ長調組曲は、レオンハルト独自の調律も相まっ…

読書録:美学への手引き

西洋美学史の流れを理解するのに打ってつけの一冊である。美学への手引き (文庫クセジュ)作者:カロル・タロン=ユゴン白水社Amazon プラトンアリストテレスから20世紀の最先端の議論まで、まんべんなく、全体像を描き切る良書である。 プラトンとアリストテレ…

読書録:カントの生涯と学説(第六章)

エルンスト=カッシーラーの『カントの生涯と学説』(1918年初版)は500ページ近くの大作であり、カッシーラーの代表的な著作の一つに数えられる。カントの生涯と学説【新装版】作者:エルンスト・カッシーラーみすず書房Amazon 美の判定の分析のための準備 …

読書録:近代美学入門

もっと早くこんな本に出会えていれば、というのが第一印象である。近代美学入門 (ちくま新書)作者:井奥陽子筑摩書房Amazon 芸術、芸術家、美、崇高といった近代美学の主要テーマが平易な言葉で簡潔にまとめられている。 諸概念の変遷から現代的意味まで、ま…

マタイによる福音書5章8節『心の清い人々』

心の貧しい人々は、から始まる「山上の説教」はとても有名だが、その冒頭部分の一節に次のようにある。 心の清い人々は、幸いである その人たちは、神を見る。 よく生きようとするなかで、有用性や有益性に回収されない何かに、人は出会う。 それは、善い行…

ヘッセの詩より『炎』

誰しも、心ざわつく日々がある。 そんな時、ヘルマン=ヘッセの詩は、よき理解者であり、道しるべである。 『炎』と題された短い詩は、私たちに優しく前向きに語りかけてくる。 おまえがつまらぬものの間を踊って行こうと、 おまえの心が憂いに苦しみ傷つこ…

読書録:バッハ『ゴルトベルク変奏曲』世界・音楽・メディア

一つの音楽作品を通じて、作曲家や音楽史、ジャンルや作曲技法を多角的に論ずる、音楽エッセイのお手本のような良書。バッハ『ゴルトベルク変奏曲』世界・音楽・メディア 理想の教室作者:小沼純一みすず書房Amazon これはバッハというよりゴルトベルク変奏曲…

読書録:ドイツ人のこころ

日本人のこころのふるさとは、何だろうか。 それは私が思うには、映画『男はつらいよ』であり、あるいは、じっとり雨降る、夏の宵、水田にこだまする蛙声。ドイツ人のこころ (岩波新書)作者:高橋 義人岩波書店Amazon 著者は、日本文化の根底にあるものとして…

中也の色彩-小川が青く光つてゐるのは

詩人・中原中也の色彩感覚に関して、極めて印象深い詩を、1933年から1936年にかけての未発表ないし草稿詩篇から二つご紹介。 朝 かがやかしい朝よ、 紫の、物々の影よ、 つめたい、朝の空気よ、 灰色の、甍よ、 水色の、空よ、 風よ! なにか思い出せない・…

ヨハネによる福音書16章22節『再会の予告』

ヨハネによる福音書の16章22節は、再会を予告する。 新共同訳では次のとおり。 ところで、今はあなたがたも、悲しんでいる。しかし、わたしは再びあなたがたと会い、あなたがたは心から喜ぶことになる。その喜びをあなたがたから奪い去る者はいない。 なお、…

ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ

チェコ東部、モラヴィア地方の作曲家ヤナーチェクが唯一完成させたヴァイオリン・ソナタ。ヤナーチェク : ヴァイオリン・ソナタ 他 (Prokofiev , Smetana , Janacek : Violin Sonatas , etc. / Josef Spacek (violin) , Miroslav Sekera (piano)) [輸入盤]ア…