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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

2015-01-01から1年間の記事一覧

2015年ライブまとめ

今年も多くの演奏会に訪れることができた。 今年一番の演奏会はやはり≪フィガロ≫新演出である。練りあげられた脚本、和と洋が融合した舞台衣装、そして比類なき音楽の高み。忘れがたきオペラ体験となった。 オーケストラや室内楽の演奏会にもたびたび足を運…

1989年日本GP予選(オンボード)

昨年の雨の中での悲惨な事故も考慮され、今年はひと月前倒しで開催される日本GPも早今週末。 1989年の日本GPの予選よりアラン・プロストのオンボード映像。F1 1989 Onboard-Lap Suzuka (Alain Prost ... 1コーナーで3速に落としてそのままS字と逆バンクを抜…

1962年バイロイトのパルジファル

この連休中、一日ひと幕と決めて、総譜を見ながら通して聴いた。Wagner: Parsifal 1962アーティスト: Wagner,Hotter,Knappertsbusch,Bfo出版社/メーカー: Polygram Records発売日: 1990/10/25メディア: CDこの商品を含むブログを見る バイロイトにおける≪パ…

2014年最強マシン

グランフロントのショールームに展示されていたチャンピオンマシン。 ここ数年でかなりスマートになったF1マシンだけれど、それでもゴテゴテした空力デバイスには複雑な気持ち。

宇宙(根源的秩序)の鳴り響きとしての交響曲

第3番だけは通して聞いたことがなかった。マーラー:交響曲第3番アーティスト: ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ハイティンク(ベルナルト),ネス(ヤルト・ヴァン),エルンスト・ゼンフ合唱団,テルツ少年合唱団,マーラー,ハイティンク(ベルナルト),ベルリン・…

ワーグナー最後の音楽劇

ワーグナーの≪パルジファル≫は筋書き以上に音楽が大変に魅力的である。 フルトヴェングラーとベルリンフィルによる『聖金曜日の場面』で目覚めた僕(当時高校3年)はクナッパーブッシュ指揮のバイロイト音楽祭のCD録音を手に入れたのだった。Wagner: Parsifa…

ターボエンジン第1期

1983年から1988年までのF1はレギュレーションが比較的安定していた。 まずフラットボトム規制によってサイドポンツーンが整理され、エアインテークに工夫がなされた。そしてターボエンジンは段階的に出力規制・燃料規制がなされるようになり、とりわけ燃費と…

6速でホイールスピンをおこすモンスター

1980年代のF1はターボ・エンジンの絶頂期である。GP CAR STORY Vol.13 Williams FW11 (SAN-EI MOOK)出版社/メーカー: 三栄書房発売日: 2015/09/07メディア: ムックこの商品を含むブログを見る 1986年と1987年に大活躍したのがウィリアムズFW11(11B)であり、…

夜に捧げられた者たち

どなたかは存じ上げないのだけれども、非常に有意義な指摘をtwitterでみかけたのでご紹介。 ブルックナー8番第3楽章の冒頭とトリスタンの愛の二重唱の伴奏が同じ 手元に楽譜がないので正確には把握できないが、どうやらワーグナーの≪トリスタンとイゾルデ≫…

大バッハの先輩

17世紀前半のドイツの鍵盤音楽における巨匠といえばフローベルガーである。フローベルガー:チェンバロ名曲集アーティスト: レオンハルト(グスタフ),フローベルガー出版社/メーカー: BMG JAPAN Inc.(BMG)(M)発売日: 2008/04/23メディア: CD購入: 2人 クリック…

ブルックナーのレクイエム

新宿のディスクユニオンで珍しい盤を発見、即購入。Requiemアーティスト: Anton Bruckner,Matthew Best,Catherine Denley,English Chamber Orchestra,Thomas Trotter,Joan Rodgers,Maldwyn Davies,Corydon Singers出版社/メーカー: Hyperion UK発売日: 1993/…

モノローグ、ペルソナ、ショスタコーヴィチ

スラブ系の音楽はほとんど聴かない。唯一、ショスタコーヴィチだけは好んで聴く。ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲全集アーティスト: エマーソン弦楽四重奏団,ショスタコーヴィチ出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック発売日: 2006/07/26メ…

のどのかわき

小学5年の国語の教科書にはウーリー・オルレブの『のどがかわいた』がとりあげられている。羽がはえたら (ショート・ストーリーズ)作者: ウーリーオルレブ,下田昌克,Uri Orlev,母袋夏生出版社/メーカー: 小峰書店発売日: 2000/06メディア: 単行本 クリック: …

ハルモニアの高みから

休みの日の朝、今日はどんなふうに過ごそうかと考えながら、まずは音楽を聞こうとおもって、やっぱりこれだと。Palestrina Vol. 3アーティスト: G. Palestrina出版社/メーカー: Coro発売日: 2013/02/12メディア: CDこの商品を含むブログを見る ジョヴァンニ…

西洋世界の根本語

どういう言語体系なのかずっと興味があった。ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産 (中公新書)作者: 小林標出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2006/02メディア: 新書購入: 4人 クリック: 41回この商品を含むブログ (52件) を見る 格変化、語尾変化、…

ヴァイオリン奏者について

好きなヴァイオリン奏者と聞かれれば、フランク=ペーター・ツィンマーマンやイザベル・ファウストをまずは挙げる。 この選び方そのものがある程度、僕の趣向をあらわしているのだが、少し言葉を変えて、では深く敬愛するヴァイオリン奏者はいるかと聞かれれ…

近代を飛びこえて

興味関心のある領域を分野横断的に照らしあわせてみると、どうやら「2つ」の特定の時代が浮かび上がってくる。【16世紀~17世紀】まだ神と王が統べていた時代、他方で個人の生にも光があてられ始めた時代 パレストリーナやフレスコバルディ、フローベルガー…

ねこは生きて、そして死んだ。

信州・安曇野のちひろ美術館の資料室には絵本が多数所蔵されており、ふと懐かしく思って手にとったこの本。100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)作者: 佐野洋子出版社/メーカー: 講談社発売日: 1977/10/19メディア: 単行本購入: 36人 クリック: 545回この商…

ブルックナーの≪パルジファルParsifal≫交響曲

仕事がひと段落し、ブルックナーの交響曲第8番のアダージョを聞く。ほっとしながら、朝日を迎える。 初稿の録音はあまり出ておらず、次の3つだけ保有している。名演コレクション:ブルックナー:交響曲全集アーティスト: インバル(エリアフ),フランクフルト放…

テクネーという語について

眼の前にお気に入りのペンが、ある。テーブルの上には水の入ったグラスが、ある。何かがそこに、ある。けれども、「ある」、この「存在している」ということ[Sein]それ自体を主語としてとらえたときに、我々はそれ以降記述する言葉を日常的には持ちあわせて…

絶対音楽の思想史

19世紀のドイツ音楽史の理解に非常に役立つ一冊。絶対音楽の美学と分裂する〈ドイツ〉: 十九世紀 (“音楽の国ドイツ”の系譜学)作者: 吉田寛出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2015/01/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 以下、特に興味深か…

100年という時間の軽薄さ

すべて音楽が入口である。 中学時代に『インヴェンション』や『平均律』を弾いてバッハにハマるというのはよく聞くが、その後の十数年そのまま中学時代を生きているような人間もいるわけで、僕にとってはJ.S.バッハの音楽がすべての扉を開いたと言える。西洋…

ナポレオン、ベートーヴェン、ヒロイズム

吉田寛さんの最近の著書である『音楽の国ドイツの系譜学』最終巻を読みながら、18世紀から19世紀への世紀転換期のうねりにうなりつつ、ベートーヴェンを聞きなおしている。 ナポレオンの大陸支配による神聖ローマ帝国の解体と成長過程にあったプロイセンの挫…

そのコンマ1秒のために

今日で大阪の夏の選抜高校野球もひと段落するようで非常にありがたい。 舞洲スポーツアイランドには野球場(本日がセンバツの決勝とのこと)のほかにもスポーツカートのサーキットがあり、もちろん僕は後者が目的で訪れるのだけれど、先日は大阪桐蔭と履正社…

Antiromantik und Romantik

実は、19世紀前半の音楽はあまり好んで聞かない。シューベルト、シューマン、ショパン、ベルリオーズ、メンデルスゾーン等々のいかにも「クラシック」といった音楽はほとんど聞かない(ただしベートーヴェンは聞く)。 実家で両親が、聞きすぎていた(聞かせ…

ポリフォニークンスト

自分の核になる音楽を改めてふりかえってみたときに、やはりバッハとブルックナーがいるのは間違いないが、そこにジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナを加えてみてもよいのではないかと最近つよく思う。6月にタリス・スコラーズの演奏会に行き、…

3度目の移転

FC2が使いにくくなったのでこちらへ移行した。tumblrにも手を出してみたが、どうも合わない。再びHatenaへ。