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und es sahe der achtsame Mann das Angesicht des Gottes genau...

ヘルダーリンと自然概念

 ヘルダーリンの詩作の重要なテーマの1つである自然についての簡潔な解説である。

ヘルダーリンにとっては、自然は所与の外界以上のものであり、彼が生き呼吸する生活圏であり、それ自身がひとつの生きているものであり、彼を愛し支え包括するものであり、そしてまさしくそれゆえにこそ、あらゆる疑念を超えてじかに体験される現実的なものである。いやそれどころか、彼にとって自然は、神的なものであり、神性に満たされたものであり、人間やその卑小で影の薄い自我よりもかぎりなく偉大である。

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彼はこの体験のもっとも純粋な表現を古代人の神話に見いだす。その神話は、自然の秘密めいた活動に生命を吹きこみ、これを崇拝するのである。彼の自然感情そのものが神話的である。

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(・・・)ヘルダーリンの哲学的な詩的夢想の趣旨は、善の価値がどれほど高い位置にあろうとも、それと並んで、またそれとは独立に、自然的なものの領域もまたあり、この自然的なものも根源的で放棄しえない固有価値の担い手であるというところにある(・・・)。自然は道徳に劣るものではない。自然のうちにも神々がおり、崇拝に値するのである。

ドイツ観念論の哲学〈第1部〉フィヒテ、シェリング、ロマン主義

ドイツ観念論の哲学〈第1部〉フィヒテ、シェリング、ロマン主義

【翻訳比較】ヘルダーリン:あたかも祭日のように

 ヘルダーリンの " Wie wenn am Feiertage..." の第6節4~5行目の訳し方について。

【原文】
 Die Frucht in Liebe geboren, der Götter und Menschen Werk
 Der Gesang, damit er beiden zeuge, glückt.

愛の結実が 神と人との作り成した
歌がめでたく誕生し 神人双方を証しする。
(川村二郎『ヘルダーリン詩集』より)

愛の果実が生まれ、神々と人間を証しするため、
神々と人間との業である歌ができる。
(濵田恂子『ハイデッガー全集第4巻 ヘルダーリンの詩作の解明』より)

愛の中で果実を、神と人間の作品である歌を生む、
両者を証言するために。
(高木昌史『ヘルダーリンと現代』より)

 ヘルダーリンの真骨頂ともいえる箇所である。また、この箇所の理解は、ハイデッガーの後期の思索の理解にも大きく寄与する。

(私訳)
 愛のうちに生まれる果実、神々と人間の所産、
 歌よ、まさに歌が神々と人間のいずれをもまことに証しするために。

Gedichte: Eine Auswahl  (Reclams Universal-Bibliothek) (German Edition)

Gedichte: Eine Auswahl (Reclams Universal-Bibliothek) (German Edition)

ミューラー・オルガンで聞くオルガン小曲集

 クリスティアン=ミューラー・オルガンで聞く、バッハのオルガン小曲集である。

 オランダのハールレムにある聖バフォ大教会のミューラー・オルガンの魅力がぎっしり詰まった珠玉のコラール集。
 レジストレーションに遠慮は一切ない。曲集全体を通じて、きらきらとして瑞々しい音色が印象的である。
 コラールとあっては無論歌心にも満ち満ちており、その独創的な音色の選択とともに奏者の卓越した技が随所に光る秀作。

(参考)ミューラー・オルガンについて公式HPより
https://www.bavo.nl/ja/orgels/

ジルバーマン・オルガンで聞くバッハ

 フライベルクはドイツ東部の古都ドレスデンから各駅停車で1時間ほどのところにある。大聖堂にはゴットフリート=ジルバーマン製作のオルガンが300年の時を超えてそびえる。

Organ Works Vol.3 -Sacd-

Organ Works Vol.3 -Sacd-


 ミーントーンという古典調律の特性を生かして、おさめられている曲目はハ長調ハ短調というコントラストで彩られている。
 中東部ドイツのジルバーマンのオルガンの音色は、北ドイツのアルプ・シュニットガーのそれとはまったく異なっている。シュニットガーのオルガンがきらきらとして瑞々しく透き通るようなサウンドだとすれば、ジルバーマンは実にまろやかで温かく芳醇なサウンドである。

bachundbruckner.hatenablog.com

読書録:ユリイカ「三国志」の世界

 今年の7月から東京国立博物館三国志の特別展があるとのことで本特集が組まれたそうな。

ユリイカ 2019年6月号 特集=「三国志」の世界

ユリイカ 2019年6月号 特集=「三国志」の世界

 三國無双シリーズや各種のシミュレーションゲームでおなじみの三国志は、やはり誰もが通る道ではないだろうか。あるいは映画(『レッドクリフ』等)から入る人もいるだろう。ゲームや映画から入って、マンガ(横山光輝三国志はあまりに有名)や小説、そして歴史本へと歩みを進める人も中にはいるかもしれない。*1
 以下、本特集の目次から一部を抜粋(順不同)して紹介。

・正史『三国志』と『三国志演義』の物語叙述について
曹操の戦いとかれの兵法
呂布「最強」への道程
諸葛亮孔明の月俸と財産
横山光輝三国志』はなぜネット世代にもウケているのか
ジェンダーの視座から見た貂蝉の描かれ方
黄蓋の武器と生死に見る『三国志演義』の形成・発展史

*1:ちなみに筆者は小学生当時、無双シリーズから入門し、横山三国志、各種映画、そして中国古代史へと順調にそのキャリアを歩んでいった部類である。