趣味愉楽 詩酒音楽

人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

読書録:美学への手引き

 西洋美学史の流れを理解するのに打ってつけの一冊である。

 プラトンアリストテレスから20世紀の最先端の議論まで、まんべんなく、全体像を描き切る良書である。
 プラトンアリストテレス、そして新プラトン主義については、その後の展開の基礎となるため比較的手厚い解説であるが、その後の中世ルネサンス近代そして20世紀についてはテンポよく議論の大枠が示されるにとどまり、西洋美学史の全体的な方向性が一読して理解できる記述になっている。
 これ一冊で入門できるかどうかというより、いま興味のある議論が西洋美学史のどこに位置付けられているのかを把握するのに最適な一冊と思われる。各論や各時代の美学史にすでに興味がある人に向けて、体系的に西洋美学史を学ぶための格好の手引書である。これを読んでから、基本書にとりかかればその後の理解はまるで違ってくるはすである。