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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

読書録:世界哲学史8 ー 現代 グローバル時代の知

 第3章(千葉雅也ポストモダン、あるいはポスト構造主義の論理と倫理」)だけでも読めればと思って手に取った一冊だが、実際、手っ取り早くポストモダン思想について概観するにはうってつけ。

 2010年代に至るまでの最新のポストモダン思想が約30ページという分量に極めて簡潔にまとめられているのが第3章である。*1
 ポストモダンの論理の要点を「ダブルバインド思考」と名付け、非常に明快に、かつ誤解の生じないよう、そしてポストモダンへの批判にも応答しつつ、テンポよく解説が進む。
 また、2000年代の日本での思想状況に加え、メイヤスーやラリュエル、マラブーらの最新の理論の紹介も非常にわかりやすい。特にメイヤスーの思弁的実在論(思弁的唯物論)の箇所は白眉。
 

*1:プラトンやカント、ハイデガーについての最低限の知識は要求されるものの、逆にいえば、そこだけ押さえておけばついていける記述となっている。