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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

ブルックナーの≪パルジファルParsifal≫交響曲

 仕事がひと段落し、ブルックナー交響曲第8番のアダージョを聞く。ほっとしながら、朝日を迎える。
 初稿の録音はあまり出ておらず、次の3つだけ保有している。

名演コレクション:ブルックナー:交響曲全集

名演コレクション:ブルックナー:交響曲全集

ブルックナー:交響曲第8番[1887年第1稿(ノーヴァク版)]

ブルックナー:交響曲第8番[1887年第1稿(ノーヴァク版)]

 インバルはコントラストや差異の度合を最大化して刺激的な音響に仕上げた録音であり、ナガノはそれと対照的に極めて流麗にふくよかに歌うことを目指した録音である。ヤングはどちらかといえばインバルのような傾向に近いが彼ほど実験的ではない。

 初稿のスケルツォのトリオやアダージョには、ワーグナーの≪パルジファル≫の一節を彷彿とさせる箇所が何か所もある。実際、ブルックナーは1880年代の前半に三年連続でバイロイトに赴き、じかにパルジファルに触れている。初稿のスケッチはその三年連続パルジファル体験の最終年の夏から始められている。
 交響曲以外では、同じく1880年代前半の宗教的声楽曲の複数の曲にも、パルジファルからの影響とおぼしき箇所がいくつか存在する。
 ただ、以上はあくまで「似ている」ということだけである。
 1880年代以降のウィーンにおけるワーグナー趣味流行も視野にいれつつ考えなければならない。