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人文系の書籍やクラシック音楽にまつわるエッセイ集

読書録:近代美学入門

 もっと早くこんな本に出会えていれば、というのが第一印象である。

 芸術、芸術家、美、崇高といった近代美学の主要テーマが平易な言葉で簡潔にまとめられている。
 諸概念の変遷から現代的意味まで、まんべんなく、過不足なく、初学者向けに述べられており、おそらく高校生以上であれば十分に内容を理解できそうである。
 
 とりわけ印象的な箇所は、古典的な美の理論の解説部分である。
 著者のまとめ方は「美=プロポーション=シンメトリー=ハーモニー=オーダー」という実に明快なものである。非常にわかりやすく、それでいて古代ギリシャから19世紀に至る美の伝統的概念を明瞭に言い当てているように思う。
 本書は新書でありながらも、巻末の読書案内に「新書」というジャンルを設けており、これこそまさに、本書こそが入門書であることを裏付けているようにも思えた。美やアートについて考えるときの土台作りのための最初の一冊として、最適の一冊である。