新共同訳では次のとおり。
ところで、今はあなたがたも、悲しんでいる。しかし、わたしは再びあなたがたと会い、あなたがたは心から喜ぶことになる。その喜びをあなたがたから奪い去る者はいない。
なお、岩波版新約聖書翻訳委員会による小林稔訳では次のとおり。
ところであなたがたにも今は悲しみがある。だが、再び私を見て、あなたがたの心は喜ぶこととなり、その喜びをあなたがたから奪うものは誰もない。
こうして並べてみると、新共同訳は典礼での使用、すなわち音読と説教を考慮しての訳出になっているように思われる。
さて、宮平望による私訳はどうだろうか。
そこで、あなたたち自身も今、悲しみを抱いているが、再び私はあななたちに会い、あなたたちの心は喜ぶだろう。そして、誰も、あなたたちの喜びをあなたたちから取り除かない。
日常利用ではやはり新共同訳だが、より忠実な訳出という点では小林稔訳と宮平望訳を参考にすべきものかと思われる。
ところで、2018年、新共同訳の後継にあたる聖書協会共同訳が刊行された。
これによれば次のとおり。
このように、あなたがたにも、今は苦しみがある。しかし、私は再びあなたがたと会い、あなたがたは心から喜ぶことになる。その喜びをあなたがたから奪い去る者はいない。
産みの苦しみと喜びになぞらえて、不在から臨在への喜びが静かに、しかし決然と語られるこの一節は、一連の告別説教のなかでも極めて印象深い。